特集12 女性推進員さんたちに聞きました。

「省エネ」と今後の課題について

●「地球温暖化防止活動推進員」とは?

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推進員は地域の地球温暖化防止活動のリーダーとして、職場や所属団体、地域や資格といった各自のネットワークを活かして、家庭部門におけるCO2排出量を削減する役割を担っています。推進員は『地球温暖化対策推進法第23条』に基づき、全国の都道府県知事が委嘱するもので、平成25年7月現在は46の道府県及び5市で6,776名の推進員が委嘱されています。高知県では平成25年2月現在52人の地球温暖化防止活動推進員がいて、地球温暖化防止のための正しい知識・対策の普及活動のボランティアを行っています。


今回は現在活躍中の女性推進員さんにそれぞれ、省エネの啓発活動をしていて感じることや、日頃のエコのことなどをお話いただきました。

(参加者プロフィール)

上野伊佐子さん(写真右):推進員1期生。「地球村高知」で活動し始めて17年になる。「きれいな地球を未来の子供たちに引き継いでいきたい」というポリシーのもと、自分にできることは何でもやろうと精力的に活動。

安部順子さん(写真中央):推進員2期生。「高知友の会」に所属。地球環境を考えて、自分が使うときに他の人の分まで使わないように配慮する「適量の生活」を目指して実践。さらに環境問題の視野を広げたいという想いのもと、小学校の出前授業などで活動。

益夕喜さん(写真左):高知市在住。2009年に高知県地球温暖化防止活動推進員。環境NGO「気候ネットワーク」の会員。2010年、eco検定合格。高知市よさこいECOライフチャレンジ2009「じてつうin kochi」で金賞受賞。現在「バイクビズ」等自転車利用促進活動考案模索中。
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●推進活動をしていて悩むこと

益「最近、推進員活動をしていて思うのは、自分のまわりに“温暖化問題”が存在することさえ知らないという人が多すぎる、ということです。そんな状況だから、私が何を言ってもうまく伝わらない。何のために節電しなくてはいけないのかという「理由」がわかっていないので、どうしようもないんですよね。だって根本的な動機や理由がわからないと、人間ってなかなか合点がいかないものですものね。だからまず、『温暖化って何? 温暖化って何が問題なの?』というところから教えていくべきなのかなと思っているところですが……」

安部「確かにそうですね。私なんかは自分自身の推進員としての研修がまだ十分にできていなくて、みなさんに省エネ、節電を広めていくところでずっと、自分の力不足を感じてしまいます。できれば推進員として、もっと専門的なしっかりした勉強をしていきたいですね。特に「CO2排出量の根拠」や、「CO2排出量の計算の方法」とか科学的な部分をきちんと勉強したうえで「環境家計簿」をつけていけたらと思いますね」

センター「人間が便利な暮らしと引き代えに使うエネルギー全体量が過剰になって、それと同時に温暖化ガスが増えて地球の表面温度はどんどん上昇している。このペースで温度が上がり続けると、気候変動でゲリラ豪雨とか台風の巨大化とか、私たちの生活に直接関わる問題が起こるということをもう少し理解してもらえたら嬉しいですね」

上野「ボーリングで氷床に穴をあけて昔の氷を調べると、産業革命前の大気中の二酸化炭素濃度は280ppm、今は400ppmを超えているんですよね。数字が表す事実を、きちんと理解してもらうことが大事ですよ」

安部「温暖化の変化というのは、言葉ではなかなか伝えにくいんですけれど、映像で見せると“ああ、そういうことか、こんなことになってるんだ、氷河が溶けて大変なんだ”と直感的に理解してもらえるからありがたいんです」

センター「確かに、映像でみると理解しやすいですものね。それにしても最近はマイバッグ、マイ箸、エコバックを持つ人がようやく広く浸透してきましたね」

益「レジ袋よりマイバッグが浸透したのは、エコというよりは「お得感」があるからでしょうね。たとえばイオンではレジ袋が1枚3円、5円しますから、少しでも安く割り引きしてほしいという節約意識でしょうね」

安部「サニーマートは2円安くなりますね。先日、私がマイバッグを持ってレジに行くと、後ろに並んだ男性が「あ、これは時間かかるな」ってつぶやいて、すっと別の列に行かれた。マイバッグを拡げてレジを通す時間が、後ろに並ぶ方にとっては苦痛になるのかな?と驚いたんです。環境に配慮する行動も、他人にとっては「うっとうしいこと」に思われることもあるんだなぁと勉強になりました。
そういう方から見ると、「レジ袋2円の節約のためにめんどくさいことをやっている」と思われるのかもしれませんね。そうじゃないんですけどね。でも、それでも粘り強く、ひとつひとつ小さいことでもやっていこうと思っています」

電気代2000円台になる節電術!

益「ecoviva!が30代から40代の女性に向けて情報発信しているということで、ちょうど子供を育てている若い母親のみなさんに向けて伝えていかねばならないんですけど、環境問題、温暖化問題が自分たちに直接影響する問題であるにもかかわらず、お母さんたちは、日々の生活とは直接関係ないと思われているのが難しいところですね」

上野「主婦はやはり、家計をやりくりしているわけですから、「節電したらそれだけ料金も少なくて得します、という切り口で省エネを訴えていくのがいちばんかもしれません。
たとえばね、私の家の電気代は一般の方に比べたらかなり低いと思うんですが、最近面白いことに更に電気代が下がりだしたんですよ。なぜかな?と思って考えてみたら、ああそうか!と気づいたことが2つありました。1つは、玄関の門燈が壊れて電球が切れたこと。2つめは息子が使っている温水便座のコンセントを、息子が出ていった後に切るようにしたこと。昼間は切って、夜帰ってきて使った後また切るようにする。大人2人家族でね、門燈と温水便座の電気を切るだけで、電気代は2000円台に下がりました。たった2つのことだけでここまで下がるんですね。便座や門灯ぐらいではたいしたことないと思っていただけに、意外でした」

益「うちも温水便座は使っていますが。大人3人で電気代は3000円ぐらいですね」

安部「あら、みなさん少ないですね! うちはマンション暮らしで2人家族ですけど、どんなにがんばっても3800円はかかっているし、上野さんのところは坊ちゃんがお仕事に行かれているんですよね。うちは夫が退職してずっと家にいますから、何か用事があって外に出たらすぐに消すようにしていますけど、なかなか徹底できない。今、家庭の電気はヘムスでずっとチェックしてるんですが、テレビはあまり電力消費していないようです。まぁこれも積算したら大きいんですが、思ったよりはかかっていない」

益「うちはお風呂のお湯をためないので、それは大きいのかもしれない。エコキュートは使っているけど、基本毎日シャワーなんですよ」

安部「うちはガスですが、うーん、どこで無駄遣いになっているのかなぁ。ヘムスでチェックしていると、1分かからずお湯を沸かす小さな電気ポットが、結構大きな電力を消費しているのでびっくりしましたけど」

益「うちは日本茶が好きだから頻繁に使っていますが、そうだったんですか。気をつけます」

センター「温水便座のスイッチを切ったらかなりの省エネになったというお話おもしろいですね。うちは古い家で、温水便座がついていないんでわからないんですが、家にウォシュレットがあったら夏の暑い時期でも温熱便座の電気を入れっぱなしにするものなんですか?」

益「そうですねー、習慣化しちゃうんですよね。節電タイプとはいえ、確かに」

上野「そう言われれば、そうですねぇ」

安部「いや、うちも温水便座はつけてないですよ。一度夫がつけると言ったけど断固反対しました」

上野「あぁ、それはつけなくて正解です。つけなくてよかったと思いますよ(笑)」

センター「最近の便座は、前に立っただけでとセンサーが感知して蓋が開いて、離れると勝手に閉じて流れるんです。全自動。こんなもの必要かなと……」

安部「ほっんと!(笑)あんなもの必要あるのかしらと思いますよね(笑)。知らないお家でその全自動便座があって、使った後も蓋を自分で閉めたらいけないといわれてびっくりしたことがあります(笑)」

センター「あれはね……人間がダメになっちゃいます」

一同 (笑)

上野「ほんとにね、何でもかんでも自動になってね」

安部「蓋を開ける閉めるという動作でも、全部電気を使っているわけですからね」

事務局「だけどね、自動で蓋がしまって閉め忘れることがないから、暖房便座の保温性が高まって“省エネに効果的”だというんですよね。なんだかよくわからなくなります(笑)。最初からいらないじゃないかと思えてしょうがないですが、これも時代のギャップですね(笑)」

●冷房効き過ぎ、暖房便座熱すぎ。さて、どうする。

益「暖房便座というとね、変な話ですが「イオンのトイレの便座」はものすごく暖かくないですか? 暖かすぎるんですよ。私いろんな企業に行って、節電できてないところに行ってパチーンってやるの、やりたいんですよね(笑)。イオンでそれさせていただきたいぐらいです」

上野「そういう時は、私はうるさがられても従業員さんに言いますよ。これは熱すぎるとかね。やはり気づいたことは日頃から言っていかないと向こうも気がつかないというのがありますから」

益「そうですねー。最近、セミナーを受けていて思うんですが、「高知城ホール」とか丸の内にある「勤労者交流館」といった場所は公共施設なのに冷房が効きすぎなんです。ふと見たら、エアコンの設定が「23度」とかになっているんですよ。公共の建物(税金)で節電しようという意識が全然ないのはどういうことだろうって、意識を疑います」

上野「それはひどいわね」

益「ちょっとショックなほどひどい」

安部「担当の係の方の意識にもよるんでしょうね。私が少し前に行っていた児童クラブの会合を鷹匠庁舎で行っていたんですが、その時の担当の課長さんは節電意識がすごく高くて、会議が始まるまで照明を消しているんです。大勢集まる会議なんですが、集まった人の顔も見えないぐらい暗いの(笑)。だから、あんた誰?誰?って、みんな手探り。始まる前にやっと照明がついて、「あら!あなただったのね!」ってなったりしました(笑)」

センター「なんと、そんなに暗かったとは! 徹底した節電ですね(笑)」

安部「本当に徹底していらした。その頃、夏に私の担当する児童クラブに来られたことがあって、そのときはたまたまエアコンを強めに入れていたんですが、すかさずその課長さんに「ちょっとエアコンが冷え過ぎですね」と指摘されて焦りましたよ。いつも節電しているのに、そんな日に限って低めに設定していた。ほんと言い訳になっちゃって参りましたよ(笑)」

上野「確かに、担当者によって節電意識は随分違ってきますよね」

安部「そうなんです。だからこそみんなで意識を高めていくのは大事なことなんだなぁと思いましたね」

上野「17パーセントの人の意識が変わったら世の中が変わると言われるでしょう。だから地球温暖化防止の啓発も、それを目指さなきゃいけないと思うんです。いいなと思ったものはなるだけそれを増やしていかなくちゃいけないなと思うのね。そのためには言っても理解しようとしない“無関心層”ではなく、今現在、エコに関心を持っている層に向かって、更に情報発信して訴えかけていくのが大事だと思いますね」
益「確かにみなさん仕事は忙しいし、毎日ばたばたしているし、余裕がないのは十分わかるけど、何かこう、ひとつぐらいはできることはあるはずなんですよね。そこに気づいてもらえたらいいのですが」

安部「そうですね、何かひとつでいいので、これだけはやっている、ということがあればいいんですよね」

上野「できれば危機感をもって、できることからでいいから取り組んでほしいと思いますね。
最近若い人でも、圧倒的に体力不足なんですよ。どこに行くにも自動車を使うし、ほとんど歩くことがないんです。私と一緒に行くと、官庁なんかも全部階段を使うから、若い人はふうふう言って音をあげてるの。それだけ自分の体力が落ちていることに彼ら自身が気づいていないんですよ。だから、そんなところからも、エレベーターやエスカレーターに乗らず階段を上がりなさいと言うんです。そしたらエネルギー的には倍ぐらいの省エネになりますもの」

益「そうか、省エネはダイエットになると言ってもいいですね(笑)」

上野「ほんと、若い人にはそう言いたいですね。体力のためにもエコになりなさいとね」

安部「みんながエレベーター使うとき、1人だけ階段を使おうとすると、みんな「え?なんで?」と言いますよね。でも、それでいいんです。自分が「エレベーターを使わない選択」をしたなら何を言われてもかまわないと思うんですよね。省エネの取り組みって、全部をしようとする必要はないから、できることをしようということを伝えていきたい。ムリをしようとすると失敗するから。自分で一つ決めて実行してほしいですね」

益「最近気づいたことですが、孫が保育園に行ってて、保育園から配られるものが全部ビニールやプラスチック製なんですよね。大量生産大量消費の時代です。これが、もっと物を大切に使う意識にかわらないだろうかと思う。そんなことに、ちょっと疑問を持ってくれるお母さん方が増えてくるといいなと思いますね。疑問に感じたところには声をあげていくというアクションが、良い方向にかわるきっかけになるんじゃないかと思うんです。もうちょっとものを大事にする視点で、ものづくりをしてほしいと思うんですよね。30代、40代の女性って今すごく忙しいけれど、男性を引っ張り込んで何とかならないかと思いますね。たとえば、こういう推進員にしても、仕事をしているときには動くことができないから申し込むことができませんでしたものね。
そういう方はたくさんいると思います。休暇もとれないし、やっととった休暇は家の用事もしたい。だからそういうときに、国や県から企業・事業所に対してボランティアの補助金みたいなのが出て、有給休暇(有休)で参加できるとかそういう仕組みを作ってくれたらもっとよくなるでしょうね」



☆みなさん、ありがとうございました。