特集14 川崎弘佳さん

大人より進んでいる、今の小学生のエコ感覚について

川?弘佳さんは一ツ橋小学校の校長先生。高知市教育研究会 環境教育部会副部長さんでもあり、小学生の環境教育に長年携わっていらっしゃる先生です。
さて、子どもたちは今どんな環境教育を受けていて、どんなことを感じているのでしょう? 川崎先生に伺ってみました。

 
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4年生でたちあがる環境意識

小学校でずばり「環境の勉強」をする学年があるとすれば4年生、5年生、そしてわずかに6年生ですが、環境の勉強をする機会が最も多いのは、授業時間数の多さからみても4年生です。環境問題は4年生の社会科の教科の中に入っていて、体験学習や見学などもふんだんに取り入れるので、総合学習の時間も環境学習に使えるんです。そのため、それぞれの学校で環境学習へのユニークな取り組みができる時期でもあるんですよ。

4年生の環境学習で主に勉強するのは、「高知市の中で自分たちの日常生活がどのように快適に行われているのか」という“しくみ”を知ることです。例えばエネルギー問題、ゴミ 問題、消防や警察、地震関係の防災など、そういったもののしくみを学んで、行政の中で「自分たちはおかげさまで安心して暮らせています」ということを学ぶ時期ですね。

ひとえに「環境」といってもいろいろありますが、4年生の場合は主に「ゴミ問題」に時間をさいて勉強しています。例えば高知市清掃工場や三里最終処分場、大津再生資源処理センター、菖蒲谷プラスチック減容工場、民間では仁井田のプラスチック再生センターなどに実際に見学に行って、自分たちが生活の中で出したゴミがどのように処理されて、それがどのように再生されて自分たちの生活に戻ってくるのか、再生できないものはどのように処分されていくのか、ということを実際に見て学んでいますので、このことがきっかけとなって、ちょうど環境問題に意識が立ち上がる学年じゃないかなと思うんですよ。

お母さんたちのエコ意識は?

★その4年生のちょうど母親世代がちょうど30代〜40代でしょうか。お母さんたちはエコに協力的ですか?

そうですね。4年生ぐらいだと、まさにその年代のお母さんたちが多いですね。ところがご家庭での環境意識には残念なことに温度差がありますね。学校教育としてもそこを何とかしたい。子どもは環境学習や工場見学によってエコを非常によく学ぶわけですが、それが実際の家庭生活にまではなかなか定着しづらいというもどかしさです。本当は、皆が見学で学んだことを、家に帰ってお母さんやお父さん、お爺ちゃんお婆ちゃんなんかに話して、自分たちはいったいどういう生活をするのが望ましいのだろう、と話合って得る学びを、家庭の中でも展開してもらえれば本当にうれしいし、今後大いに期待したいところです。

センター★実は先日、すでにお母さん世代の方に温暖化問題についてお話を伺いましたが、エコは毎日忙しくて実践できないという方が少なくないんですよね。お母さんは話をきいてくれないので、むしろ子どもに教えて、子どもから大人に環境教育を伝えるしかないという推進員さんの意見も聞いたばかりです。

そうですね、今はそういう時代だそうですよ。環境教育は「子どもから、大人へ」の流れが主流なんです。大人は日々のことに忙しくて、わかっていても環境問題に取り組む余裕がないんですよね。それは確かにあると思います。 だけど昔に比べて、現代の子どもたちが学習する内容や方法が変わってきたのも、実は大きな原因だと思うんです。

昔はリサイクルだけしか教えていなかったけれど、今はリデュース、リユース、リサイクルという3Rが当たり前になって、そのことについて小学生はきちんと学んでいるんですね。それに、子どもは体験学習で実際の現場を見ることができる。これは大きな違いです。今、30代〜40代のお母さん世代の方なら、清掃工場ぐらいは見学に行ったことがあるでしょうね。でも、今の子どもたちはそれだけではなく、プラスチック減容工場とか、プラスチック再生センターとかあらゆる現場を見学に行っていますので、それはすごいことですよ。ただゴミを燃やしてお湯にして温水プールにするというだけでなくて、実際に自分たちの生活に戻ってくるところまで学習しているので、おのずと意識が高くなるんですよね。 だから、やはりお母さん方は「エコを子どもに教えられる」と言われますよ。カラになった洗剤容器をぽいと捨てようとすると、子どもが「ちゃんと中身を洗って!」とか注意されると苦笑いしています。

巨大なゴミピットのゴミの量に絶句

★先生が見た、環境教育現場での子どもの印象的な反応は?

それはやはり、子どもたちが「清掃工場の巨大なゴミピットと大型クレーン」を見たときの反応ですよね。あの膨大なゴミピットのゴミの量。それを持ち上げ攪拌しているクレーン。クレーンからこぼれ落ちるゴミ袋は小さな豆粒に見えます。それはすごいもんですよ。1日で何百トンというゴミを24時間焼却しているということとかも。ああいうのを間近に見て、自分たちの家から出るゴミの行方の現実を見ておそらく強烈に学んでいますよね。自分たちが出しているゴミは子供の感覚ではビニール袋に何個、ゴミステーションに何十個という単位だけど、実際に焼却場に行くと、「高知市でゴミってこんなにいっぱいあるがぁ?!」という驚き、ショックを受けているようです。

それに清掃工場では24時間体制で一所懸命処理している方々がいて、稼働している機械があるという驚きはきっと大きいと思うんですよ。
プラスチック分別などの機械の技術革新は、やはり私たちが見てもすごいものですよね。水曜日にぐちゃっと棄てたプラスチックやビニールごみが再生工場のベルトコンベアーに流れていく。それを機械がコンマ何秒はじいていく。プラスチックの成分を瞬時に分析して機械が種類分けしているんですよ。あれをみると、本当にすごい! と感心します。だけど、もっとすごいのは、それでも最終的には人間が手で触って識別しているというところですよね。コンピュータもすごいけれど、手でさわっただけでプラスチックゴミの選別ができる、その人間の手の皮膚感覚は機械よりももっとすごいな!というところに、子どもたちは純粋に驚いていますね。これだけは実際に行かないとわかりませんので、非常にいい勉強になっているなと実感します。

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私たちが知る以上に子どもたちの環境教育は進んでいるんですね。
大人も子どもに負けないように、いろいろな情報や現場を実際に見聞きして、エコの感性をもっともっと磨いていかねばならないなと思いました。ありがとうございました。