第1回 こうちサステナ・カフェ
テーマ:「フィンランドに暮らして」
話題提供者:渡辺 知子さん (フィンランド・ヴァーサ市在住 日本語教師)
フィンランドは世界一幸せな国と言われて5年連続で1位。福祉や教育、医療など、国民の負担が少ない仕組みは有名ですが、その生活についてお聞きできる貴重な時間でした。
教育では、「教育で貧富の差をなくす」という前提があり、授業料は修士課程までは無料、無償。渡辺さんが留学した2007年には外国籍の人も無償だったということです(現在はEU内の国の人のみ無償)。学校へは失業中の人やさらにステップアップを目指す人も学ぶ選択ができます。フィンランド国籍の人にはそのための住宅手当や学習支援の手当も受けることが出来るようです。
医療費も基本的な検査や診察料などは無料です。しかし、居住地域により受診できる病院が決められており、また予約制となっているため、すぐに診察してもらえるということは難しいようです。すぐ診てもらえる私営の病院もありますが、そこは有料ということです。
子育て支援で有名なベビーボックスは1980年代にスタート。中には50種類ぐらいの子ども服、生まれてすぐに使える体温計、冬の防寒に使える服やぬいぐるみ、夏服などたくさんはいっており、妊娠中に保健所に登録すると、希望する全家庭に無料配布されます。
環境への取組も注目されますが、人々はあまり意識をしてないような印象があるということです。しかし、飲み物の容器は30円ほど商品に上乗せされたデポジットの仕組みがあり、スーパーに容器を返しに行くと金券がもらえるため、街中でポイ捨て容器がいつまでもあるようなことはないとのこと。意識をしなくても合理的な仕組みで機能しています。
渡辺さんのお話で印象的だったのは、「フィンランド人はプライベートの時間をとても重視する」ということでした。フィンランド人が考えるフィンランドのイメージは、湖が多く、特に今のように暑い時期は湖近くのコテージに行き、湖で泳いでゆったり過ごす。6月下旬はまだまだ日が長いため、夜まで明るいから夏は夜遅くまで遊べる。仕事はなるべく早く終わらせ、森にブルーベリーを摘みに行くなど、日常を「豊か」にする考えや行動がありました。「サスティナブルな暮らし」の大切な視点をフィンランドの暮らしを通して伝えていただきました。
(2022年7月30日)
プロフィール:渡辺知子(わたなべ ともこ)
中学校の英語教師を経て、アメリカの大学に留学。帰国後はさまざまな仕事を経て2007年フィンランドの大学院に留学。留学中より日本語教師として活躍し、現在に至る。