第2回 こうちサステナ・カフェ
テーマ:「移住者と環境活動の可能性」
話題提供者:近藤純次さん (NPO法人 いなかみ代表)
いまや移住促進に取り組んでいない自治体はない、と言われるほど普及した「地方移住」。香美市でも移住相談窓口の利用者は年々増加し、令和3年度は延べ400件を数えるほどになりました。平成27年度~令和3年度の7年間の移住実績は約200名に上り、特に近年は家族での移住者が増加傾向にあるそうです。また、これまでは関東圏からが中心だったのが、新型コロナの感染拡大以降、高知県内からの移住も増加していることが、最近の特徴となっています。
香美市に移住を希望する人々が求めていることのひとつに、自然に近い暮らしがあります。子どもに様々な体験をさせたい、と考える家族には、里山がっこうの米づくり体験や、田んぼの生きもの調査などのイベントが大人気!子育てについては、グローバル教育への関心の高まりを受け、大宮小学校が国際的な教育プログラム「国際バカロレア教育」の認定校になったことも、国内外からの注目を集めています。また、農的な暮らしがしたい、自然農や有機農業に取り組みたい、といったニーズのほか、環境問題へのアプローチとして、林業や狩猟に関心を持って移住を考える人も増えているそうです。
このように自然の豊かさを求めて移住した人々が、地域の環境活動の担い手になる可能性はどこにあるのでしょうか。例えば子どもと一緒に自然体験をする家族をこどもエコクラブ活動につなげる、薪ストーブを持っている人と林業ボランティアをつなげる、狩猟に関心のある人とシカの食害対策のネット張りボランティアをつなげるなど、いろんなアイデアが浮かびます。しかし、ここで注意すべきことは、移住者は、自らの意思でやりたいことをやっている人が大半であるということ。こちらの期待を押し付けるのではなく、相手が今求めていることに活動を合わせていくことができれば、移住者が環境活動の担い手になる可能性は十分にあるのではないか、と近藤さんは言います。
移住促進には、地域の魅力を伝え、ファンを増やすための取組も不可欠です。香美市を廻る体験博「かみめぐり」では、物部川アユの産卵観察会、野草茶づくりなど環境活動と結び付けたプログラムが想像以上に人気を集めています。お楽しみをベースにし、プログラムを提供する側が伝えたいことだけでなく、主催者側、参加者双方のニーズに沿った内容であれば、環境活動も観光プログラムにできる可能性は十分にあるそうです。
「相手を理解すること」が個人テーマだという近藤さん。「相手を理解すればするほど、事前に情報を集めれば集めるほど、企画成功の可能性は高くなる!」「あるものを広めるより、広まるものを創出することを意識する」「地域の魅力と環境活動をうまく組み合わせる」。環境活動の中間支援においても大いに参考になる考え方だと思いました。
(2022年9月24日)
プロフィール:近藤純次(こんどう じゅんじ)
高知工科大学卒業後、環境の杜こうち事務局スタッフを経て、2015年から「特定非営利活動法人いなかみ」理事長として、香美市の移住促進、地域活性化事業などに取り組む。