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第4回 こうちサステナ・カフェ

テーマ:「森川海をつなぐ・アユ」

話題提供者:松浦 秀俊 さん(物部川漁業協同組合 組合長)

こうちサステナ・カフェ(4)
 新年最初のサステナカフェ。今回は物部川漁協の松浦秀俊さんにお話をいただきました。物部川という、流域にとってかけがえのない川の自然の恵みを次の世代にバトンタッチするため、組合員や流域の多くの人々と共に、河川環境の改善等に取り組まれています。

 松浦さんは「川本来の自然の姿とは、蛇行する流れの中に「秩序」と「不秩序」が交錯している。これこそが美しい川の原風景。」と言います。しかし、人間が川を整備すると規則正しい人工的な直線にしてしまう。それが、川の生態系環境を厳しくしているのだそうです。「本来の日本の川というものは、山が保全されていれば、少々の雨では濁らない。」日本全国でアユや渓流魚を求めて釣り歩いてきた松浦さんの気づきです。

 物部川漁協では、毎年秋のアユの産卵時期には、河川敷に人工の水路を作り、川底にアユが産卵できるような小砂利を敷き詰めて整えた産卵場を作らなければならないそうです。

こうちサステナカフェ(4)

 なぜそんなことをしなければならないか?流程70km余りの物部川に3つのダムがあることによって、様々な問題が起こっているからですと言う松浦さん。ダムができると、アユが上ってこれなくなるだけでなく、大水が出たとき、濁水をためこみ、濁りが長期化して、生態系に壊滅的な影響を与えるそうです。それに加えて、ダムは水だけでなく、砂礫の流れも遮断するため、アユの産卵に不可欠である小砂利が供給されなくなったからです。さらに深刻なのはその影響は川だけにとどまらず、海岸もやせ細り、アサリやハマグリも採れなくなり、今まで当たり前に食べていたアサリさえ、輸入に頼らなければならないという現状を私たちは突きつけられているのです。

 しかし松浦さんは、水産資源を上手に管理して枯渇させない配慮をし、環境保全の知恵を絞れば、日本の漁業にはまだ希望が残されていると言います。そのためには今後、流域が一丸になって「食料エネルギーの自給自足」、「継続的なコミュニティの構築」、「現状をどうやって乗り越えるかを本気で考える」を実行することだとおっしゃいます。そして、アユをはじめとした生物や川の生態系について、特に若い世代の方に現状をよく知ってほしいし、何より、自然やそこにすむ生き物に感動する感性を培ってほしい。そのために、アユが産卵し、海から上ってくる光景を流域の子どもたちに見てもらえれば、大人が難しい説明をしなくても、そうした感性は自ずと培われると話してくださいました。

 アユの稚魚など実際のサンプルや分かりやすいデータを駆使したお話のあと、美しい歌声を披露してくださった松浦さん。最後は「人間の姿をしたアユのお父さん」に見えました。楽しく学びの多いひとときをありがとうございました。

(2023年1月28日)

こうちサステナカフェ(4)松浦さん

プロフィール:松浦 秀俊(まつうら ひでとし)
小中学生のころから、アユやアメゴ釣りに目覚め、全国の川を釣り歩く無類の釣り好き。2000年に著書「川に親しむ」を刊行。2017年から物部川漁協の組合長に就任し、現在に至る。香美市在住。

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