第5回 こうちサステナ・カフェ
テーマ:「自伐材を活用した復興支援」
話題提供者:四宮 成晴 さん(土佐の森・救援隊 副理事長)
「震災直後、まず岩手県大槌町の吉里吉里地区に入りましたが、鉄筋コンクリートの建物以外は、木造も鉄骨も全部流れて市街地は更地になっていました。仮設住宅のほとんどは、里山の奥に建設されるため、不便で買い物にも行けない。その仮設住宅の撤退後、更に山奥に建設された仮設住宅へ移ることを余儀なくされ、日常に戻れない人々は現在もたくさんいます。」
四宮さんは当時、日本財団、豊田財団、セブンイレブン財団等企業による復興支援補助金を利用し、復旧支援の活動費に充てたそうです。
「土佐の森救援隊は吉里吉里地区で支援活動を行う多くの団体と協力し、移動式薪ボイラー車で2000人の避難者がいる吉里吉里小学校に入浴施設「薪の湯」を作りました。骨の折れる作業でしたが、釜を傷める釘やステンレスを念入りに除去し、交代しながら24時間薪を燃やし続けました。また、津波で潮をかぶった塩害木をチェンソーで切り倒して製材し「薪」として販売しようと企画したところ、高知のJAが米袋ならいくらでもあると協力してくれて、丈夫な米袋に薪を入れた「復活の薪」と名付けて販売することができました。これは、のちにボランティアや中間支援組織を介することで、若者の仕事にも繋がりました。」
塩害木を切っているうち「こんなところにまで津波が」と、驚いたという四宮さん。切り倒したものの、運ぶ重機がないため、他のボランティアに協力してもらいながらの自力運搬作業だったそうです。陸前高田では一本だけ残った「奇跡の一本松」の実生を採取し、いろいろな所に植え付けを行う活動をする傍ら、被災地の人々に林業研修を100回以上行ってきたそうです。
「現地では南三陸、大槌、さまざまなところで、震災によって職を失った若者や中高年の人々に山に携わる林業研修を行い、人とのつながりをはぐくんできました。海の仕事をする人々が、山の仕事を初めて見直したと言ってくれる人もいて、そういう声が聴けるだけで、活動を続けてきて良かったと思います。」
復興支援の現場に入り、実際に体験した四宮さんの語り口と震災の映像は胸に迫るものがありました。忘れてはならない、貴重な時間となりました。
(2023年3月12日)
プロフィール:四宮 成晴(しのみや しげはる)
四宮計画事務所主宰。NPO法人「土佐の森・救援隊」の活動に参画。高知県小規模林業アドバイザーとして、林業の担い手を養成する講座の講師を務めている。