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第6回 こうちサステナ・カフェ

テーマ:「海洋プラスチックゴミはどこから、そして、どこへ」

話題提供者:一色 健司さん(高知県立大学非常勤講師)

 外洋を漂うペットボトル等のプラスチックの実態はまだ解明されていないことも多いののですが、川から海に漂流するプラスチックは1925万~2342万トン(2016年における推定量)と言われています。これは推定流出量の1%しかありません。生物起源の物質はほとんどが生物によって分解され、生物に再利用されますが、プラスチックは生物分解できず、自然分解まで数百年~数千年を要すると言われています。このまま対策しなければ、プラスチックは海に溜まり続け、2050年には魚の量を超えてしまうことが懸念されます。

 プラスチックの原料は石油であり、その消費量は全消費量の約6%です。日本のプラスチックの生産量は、アメリカ、中国に続いて世界第三位です。そこで、海洋ゴミ回収の効率について試算してみたところ、河川敷や海岸に漂着した2リットルのペットボトルを1本回収すれば、1平方キロメートル分の海洋汚染を防ぐことになる結果が出ました。ボランティアなどによる回収は、海洋汚染の防止には少なからず意義がある行動だと言えるでしょう。

 海洋汚染への対応として、個人・消費者、業界団体・企業、各省庁や都道府県・市町村、NGO・NPOにできることは、マイボトルやマイバッグ、シェアリング、代替素材等の利用で「無駄な使用を減らす」こと。プラ製品の使用後は分別・選別・再生により、適正な処理をすること。河川や海岸、街なかでは、処理から漏れたプラ製品を回収することです。

 また、回収しきれなくても溶ける生分解性プラスチックやバイオマスプラスチックへの置き換えも重要になってきます。ただし、現在最も広く使われている原料は、堆肥の中では1週間程度で分解されるものの、深海に流出した場合、水温の低さからすぐには分解されないので、他のプラスチックと同じ海洋汚染を引き起こします。また、5ミリ以下の微細なマイクロプラスチックや洗剤、歯磨き粉等に含まれるマイクロビーズは回収不可能なため、製品の製造や販売を規制することが必要となります。
 
 今後、このような自然環境下に排出されるプラスチックを削減するためには、製品の製造から使用に至る設計全体を見直す必要があります。プラスチック使用量そのものを削減し、使い捨てではなく再利用可能な設計にすること、マテリアルリサイクルが可能な材料を使うこと、容器を見直すことなどが重要になってきます。

環境の杜こうち通常総会後に開催した、今回のサステナ・カフェ。私たちが大量に使っているプラスチックの一部が残り続ける現実について、考えさせられる機会となりました。

(2023年6月3日)
第6回 こうちサステナ・カフェ 一色先生

プロフィール :一色健司(いっしき けんじ)1958年生まれ。
高知県立大学名誉教授。理学博士。研究者。高知大学の生活科学部 環境理学科で海洋の分析化学的研究を行う。研究分野は環境動態解析、分析化学、科学教育で、海洋化学や環境分析化学に精通している。趣味は分解と修理・改造。パズル、将棋・囲碁、山歩き。愛媛県今治市出身。高知市暮らしは35年になる。

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