第7回 こうちサステナ・カフェ
テーマ:「南海トラフ地震による高知県の環境被害について」
話題提供者:金田 善行さん(香川大学)
南海トラフ地震による被害は、静岡県から宮崎県にかけて震度7、隣接する周辺の広い地域では震度6強から6弱と想定されています。また、被災の範囲は広く、本州から四国・九州までともいわれています。関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波が襲来し、影響する隣接地域は30都府県の750市町村に及ぶとされ、これは全国面積の約32%にあたります。
南海トラフ地震が発生した場合、農業・水産業、製造業、国際物流産業に大きな被害が出ることが予想されます。津波は海水だけでなく、泥や砂も運んできます。そして、何度も押し寄せてくるため、地震が収まっても火災や大量のがれきが問題となります。そのため、災害を予測し、被害を軽減するための研究と早急な復興対策が重要とされています。なにより事前準備、災害時の適切な行動、そして災害後の対応の計画がスムーズに行われるようにすることが重要です。
地震の警戒情報は、南海地震と東南海地震に関するものです。南海地震はいつ起こるかわからないのですが、30分で30センチ以上の浸水域がある地域や避難が困難な人は2週間避難するべきでしょう。東南海地震ではM7クラス以上の地震が起こる可能性があり、スロースリップが加速したら臨時情報が出るので、常に避難できる体制を整える必要があります。高知県は30分で30メートルの津波という非常にシビアな想定なので、ぜひこの情報には気をつけてほしいと思います。臨時情報が出たら、浸水域にいる方は必ず1週間避難をしてください。
国内最大の津波来襲が予想されている高知県。お話のあと、「高知(こうち)」の地名の由来は川に挟まれた洪水地帯を意味すると教えていただきました。大地震から身を守るために、日頃の備えと行動シミュレーションが大切と心に刻みました。
(2023年8月19日)
プロフィール:金田 義行(かねだ よしゆき)
1953年東京生まれ。東京大学理学部研究科大学院地球物理専攻修士課程修了、理学博士。専門は地震学、減災科学研究。文部科学省委託研究「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」総括責任者。情報科学技術委員等多数歴任するほか、海洋研究開発機構(JAMSTEC)にて想定震源域におけるシミュレーション研究、被害想定研究等を推進。社会実装に重きをおいた理学、工学、社会科学や行政との総合的な連携を提唱している。